「ガジェットが大嫌い」

俺は元来、異常に物持ちが良い。別にそのスタンスを貫いて生きてきたつもりはないが、今引き出しに入っているパンツとか穴空いてるのとかあるんじゃないかな。これは捨てるタイミングが分からないという理由で穿いていたりするので例外だが、パンツの傷みに無頓着になるくらい同じ物を使い続けるのである。

基本的に良いモノを長く使いたいと考えている俺は、財布も服もめったに新調しない。店頭で良いなと思うものを見つけても、買うという段階になかなか至らない。良いなと思ったあと、何日もそれが頭から離れないというようなことがあってようやく購入するわけである。その間に売り切れたりで手に入れられないことがあったりするが、それはそれで縁がなかったということで諦めればいいと思っている。

何年か前、オーディオインターフェースが壊れた。オーディオインターフェースとはデスクトップミュージックと呼ばれる音楽制作の現場においてなくてはならないパソコン周辺機器で、いわゆるガジェットとよばれる類のものだ。

俺はガジェットが嫌いだ。なぜなら、どんなに良いものと言われるモノであっても結局は一過性の価値しかないものばかりだからだ。コレは急速に発展していくテクノロジーが悪なのか、はたまたメーカーによる購買促進戦略が悪なのか分からないが、ガジェット製品には俺の考える良いモノの定義が何一つ備えられていない。

ガジェット業界のやつらが宣伝文句で謳っている「良いモノ」ほど信用ならんものはない。俺はその壊れたオーディオインターフェースを買ったとき、あいつらが良いと言っていたものを選んだ。生産者だけじゃなく、消費者もみんな口を揃えて言っていたから間違った選択はしていなかったはずだ。少し専門的な話になってしまうが、それはコネクタにFireWireというApple社独自の規格を採用していて、USBよりも転送速度が速く処理能力にも長けていた。Macで音楽を作るならUSBよりもFireWireの方がいいというのが当時の通説であった。そしてAppleFireWireをプッシュしていた。

値段は高かったが良いモノなのだから仕方がない。そう思ってそれを買った。でも、どうだろう、とりあえず壊れたな。67年で。それぐらい使えば壊れるもんなの?分からんのじゃけど。

修理代の方が高くつくから新しいの買った方がいいと言われた。あいつらの言う良いモノには「長く使える」って概念が全くないようだ。

尤も、ガジェットの嫌いな点は他にある。それは平気で規格を変えてくるところだ。

Macユーザーのミュージシャンにとって、FireWireはかつてのスタンダードであったことは前述した通りだが、驚くことなかれ。現行のMacにはFireWireを差し込めるポートがなんと一口もない。一口もだ。今推されているのはFireWireではなくてThunderboltとかいうまた違うやつなのであーる。

そんな殺生な。話と違う。俺のFireWireのオーディオインターフェース、なかなかバカにならない金額だったぞ。そんな簡単に使えなくなることってある?ナイガシロの滝やん。FireWireポートが廃止されたばかりの頃、俺は相当ショックをうけた。

今ではFireWireのメス口×Thunderboltのオス口の変換ケーブルすら売っていない。無理やり2本くらい経由したらようやく挿せるみたいな感じだった。

現行のMacでレコーディングしたとき、しょうがないからそうやって使ってみたけど、2本も経由してたらノイズもジージーでコレモンよ。もう最悪。合計3本のケーブルがあるってことだからどいつに原因があるのか探るのも厄介。そんなことしてたらオーディオインターフェースの方が壊れやがった。マジ最悪。とりあえず2万くらいの安いやつ買って補完したけど、造りがちゃっちくてミニステレオジャックがブカブカでヘッドホンが片チャンネルしか再生されなかった。交換してもらったけど、2個目もおんなじ、マジ卍。

スマホとかでも思うんだけど、ケータイ会社にしろメーカーにしろ、買い換えること前提で物事進めるの何なんだ?機種変はスマホカバーと画面保護フィルム購入までがセットみたいな風潮も意味がわからない。スマホの画面が割れて修理に出したときなんか「あちゃー、スマホカバーしてました?」とか当たり前のように言ってくるけど、J-SH06とかN503iとかちょっと落としたくらいじゃ壊れなかったぞ。(そもそもスマホはアスファルトの衝撃に弱すぎなんじゃあ!!なにがアップルケアじゃああ!!そんなもん今すぐ廃止せぇえええ!!!)

さっきのケーブルの話でもそう、まずコネクタの形状を維持することに全力注げよ。機能向上はそれからにしてくれ。USBやらFireWireやらThunderboltやらどんな開発過程があったんか知らんけど、とりあえず規格を簡単に変えるな。

やつらは技術の進化だの利便性だの声高に主張するけど、そんなもんどうせすぐ使えんくなるんじゃろ?だったらもうそれは進化じゃのうて退化じゃ。どこが便利なん?新しいオーディオインターフェース買ってもまた同じ目に遭うかもしれんって考えたら、もう買うのやめよかなって結論になる。

良いモノっていうのは頑丈だし古くならない。ましてや数年そこらで入れ替わる価値など論外だ。ガジェットはそんな俺の考えを見事に逆行しやがる。だから俺はガジェットが大嫌いだ。

しかし、世の中はもうそいつの力無しに回っていくことができないところまで来てしまった。もう後戻りはできないだろう。世の中はということは、俺もである。そんな葛藤を抱きながら、今日も俺はサウンドハウスを眺めるのである。

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