カットモデルをしたときの話

この間、インスタ経由でカットモデルの依頼が来た。

髪は少し前に切っていたが、前髪をもっと切ってもらえばよかったと心残りがあったので、あわよくばいい感じにカットしてくれたらと思い、快諾。

快諾したのはいいが、カットモデルを頼まれたのなんていつぶりだろう。若い頃は何回かあったけど、もういい歳だし、そんな依頼はかなり久しぶりで、当日ガッカリされたらどうしようと多少緊張していた。

髪の毛のハリとかコシとかは無くなってきてるだろうし、「イメージ通りのスタイリングができない。帰って」とか言われるかもしれないから、あらゆるトラブルを想定しながらお店に向かった。

お店に着く。その日は月曜日でお店は定休日。扉を開けるとスタイリストの方が笑顔で出迎えてくれた。

とても感じのいい人でひとまず安心。

早速施術が始まったが、会話はテンポ良く、必要以上にプライバシーに踏み込んでこない完璧な話題選び。

美容師の鑑のような人だったので、緊張もどっかへ吹き飛んだ。

ほどなくしてスタイリングが終わり、写真撮影へ。

カットモデルはただ自分の髪を差し出しておけばいいわけではない。

せっかくいいスタイリングができても、モデルの写真映りが悪ければ全ておじゃんになる。

しっかり責任を果たそうと気を引き締め、カメラの前に立った。

写真撮影がスタート。

顔をキメる。

スタートして間もなく、スタイリストの方が言った。

「じゃあ、次はもう少しアゴあげてみましょうか」

アゴをあげる。色んなカットが欲しいだろうから指示が出たらすぐに従う。

「あーいいかんじですね、このままどんどんいきます!」

モデルの気分を上げて色んな表情を引き出すのもスタイリストさんの仕事。

専属のカメラマンがいるわけではないから大変そうだ。しっかり応えてあげなければならない。

俺は気を引き締め直し、表情を作った。

「もう少しアゴあげてみましょう」

どうやらまたアゴが下がっていたらしい。もう一度アゴを上げる。

が、しかし

何度やってもアゴは下がってくる。

その後もずっとアゴを指摘された。

よほど俺のアゴは下がっていたらしい。

「写真撮られるのって難しいですよね〜」

スタイリストさんは優しくフォローしてくれた。

プロのモデルさんはシャッターが切られるたびに次々と表情を変えていくが、俺はプロのモデルさんではない。

スタイリストさん曰く、プロのモデルさんでなくても自分の角度を知っている人はいろんな表情を繰り出してくるらしいが、俺は自分の角度など知らない。

だから同じ表情を貫き通す。

撮影も終盤に差し掛かると、スタイリストさんは「うん、うん、いい感じ、いい感じ」と何度も口にしていた。

その言葉の真意やいかに。

何度指摘しても直らないアゴに嫌気が差して諦めてしまったのかもしれないしもしかしたら撮影を重ねていくにつれて本当にいい感じになっていたのかもしれない。

「今日はありがとうございました!ちなみにスタイルが採用されるかどうかは、このあと先輩に写真を見てもらってから決まります」

全ての工程が終わったあと、スタイリストさんはこう言った。

幸運を祈る。(急に他人事)

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