人生は上下だ #3 「変わり者を演じる彼」


 Q.私の彼はバンドマンなのですが、ジョンレノンやカートコバーンなど、ロックスターのエピソードに自分との小さな共通点を見つけると「俺も同じだなぁ」と呟いたり、心理テストで変わり者という診断結果が出たりするとニヤニヤが止まらなかったりして、気味が悪いです。ある日、友達とケンカしたと言うので理由を問いただすと、「自分がいかに変わり者かということをお互いに主張していたら、徐々にヒートアップしてケンカになってしまった」と言うのです。そんな事でケンカするなんて、私の彼は本当に変わり者なのですか?

A.奇人変人に憧れてそのようなことを実際に口走ってしまう、あるいは口にしなくても自分は変わり者だとさり気なくアピールしてくるような人は、結論から言ってしまいますと、極極普通の人種です。ありきたりな答えになってしまいますが。どんなに自分を演出してみせようが、どんなに自分を暗示にかけようが、奇人変人にはなれません。その彼は自分が奇人変人だという既成事実を作り上げる為、たゆまぬ努力をしているのでしょう。

本当の奇人変人というのは、大きく2タイプに分けられます。まず1つめが、その彼とは真逆で、自分が周囲と違っていることを恥じているタイプ。絶対周りに知られてなるものかと自分の実情をひた隠しにするのですが、あまりのヤバさゆえ隠しきれず漏れ伝わってしまうタイプです。

中には変化球タイプで、事実を受け入れ、そういう人間として生きていくことを決心し、敢えておおっ広げにするという人もいますが、このタイプはある種の賢さ・強かさが見え、本当の意味での奇人変人とは言えません。

もうひとつは、トンデモナイことをしておきながら自分は周囲と何ら違わないと思っている人です。

中には偉業を成し遂げている人もいるので、憧れを抱く人もいるでしょう。しかし、奇人変人というのはそんな生易しいもんではありません。かの天才音楽家ベートーベンは、ひどい癇癪持ちで周りの人にお構いなしでキレ散らかしたり、浮浪者のような出で立ちをしておきながら異常な潔癖症で、特に手を洗うことに関してはかなり強い執着心を持っていたりという謎気質。「破戒」「夜明け前」で有名な文豪・島崎藤村に至っては、妻子を極貧の末に死なせたり、姪を孕ませてフランスに逃亡したり、臨終間際で憔悴しきっている友人・田山花袋に「田山くん、今から死ぬってどんな気持ちなの?苦しいの?」と無神経極まりない質問をするなど、とても憧れという言葉で片付けられるようなレベルではありません。(これはちょっと違う話ですが、銀杏BOYZの峯田和伸は、精液に3億匹の精子がいることを初めて知ったとき、自慰行為をする度にその全てが無駄死にしていくことを哀れんで、以来、自慰行為が終わると泣きながら自分の精液に米粒を与えていたそうです。昔ブログに書いていました)

天才には非常識であって欲しいという勝手な願いを世間が持っているというのも関係していると思います。が、奇人変人=カッコいいものだと盲目的に思うのは考えものです。人間はうわさ話が大好きですから、どうでもいい話ばかりがひとり歩きしますが、どんな天才も現実は甚だノーマルだったりするもんです。それを逆手にとって「ジョンレノンってめっちゃ普通だったらしいよ」と彼に教えてあげれば、次の日から「奇人変人に憧れてノーマルに振舞う」ようになるでしょう。

ところで、奇人変人は順応性の低さから人が寄りつかないこともしばしばですが、稀にパトロンやパートナーが寄り添ってくれるケースもあります。傍若無人な振る舞いを目の当たりにしても、無心でいられるその人たちは、実は一番の奇人変人ともいえます。奇人変人の条件というと、普通じゃない考え方や行動をとることを条件に挙げがちですが、もしかするとそんな事はどうでもいいのかもしれません。というより、何があろうとブレずにいられる強い心を持つ人と捉えたほうがいいでしょう。そうなると、あなたの彼がいつまで奇人変人だとブレずに言い張れるのかが見ものになってきますね。

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