人生は上下だ #2「ふくろはぎだと思い続けて大人になってしまいました」


 Q.私は大人になるまで「ふくらはぎ」のことを「ふくろはぎ」だと思っていました。母がずっと「ふくろはぎ、ふくろはぎ」だと言っていたからです。この間違いを友人に指摘されたときは、恥ずかし過ぎて穴があったら入りたいくらいでした。同時に母を恨みました。他にも間違った認識をしていることがありそうで怖いです。どうしたらいいでしょうか?(愛知県 今にも泣き出しそうなピエロ 30歳 女)

A.そんなに悩まなくていいですよ。なぜかって、あなたは間違いに気付いたからいいでしょう。しかし、あなたのお母さんはきっと未だに「ふくろはぎ、ふくろはぎ」と言い続けてますよ。お母さんはあなたの何倍も恥ずかしいことをしているのですから安心してください。

誰しもが常識的に知っていることでも、まるで奇跡の上に奇跡が重なるかのように、全くそれに触れることなく大人になるということはよくあることです。私にもありました。1個や2個じゃききません。今すぐに思い出せるのは「ビッチ」という言葉です。

皆さんご存知の通り「ビッチ」とは女の人につける蔑称で、アバズレ女とか尻軽女という意味なのですが、私がこの言葉の意味を初めて知ったのは23才くらいのときだったと思います。それまで一切その言葉に触れることなく生きてこられました。グランドセフトオートとか全シリーズ通してバリバリやってたんですが。ローリングストーンズの「bitch」という曲も本当に大好きでしたが。

サッカーW杯フランス大会時のクロアチア代表に「アサノビッチ」という選手がいたという遠い記憶にちなんで、浅野という名の女性にビッチというニックネームをつけたこともあります。その女性はおとなしくて心の優しい、ビッチとは到底かけ離れたような人でした。そしてここでも奇跡が起こったと言うのが正しいのか分かりませんが、その女性もビッチという言葉の意味を分かっておらず、私が「ビッチ、ビッチ」と呼ぶ度に毎回笑顔で返事をしてくれました。

ビッチはバイト先の同僚だったのですが、ある日そこの店長が「浅野のどこがビッチやね~ん!ビッチの意味知ってるか~?」とネイティブな関西弁で私の無知を指摘してくれました。私が初めてビッチという言葉を認識した瞬間です。

恥ずかしくてたまりませんでした。それと同時に、定着してしまったビッチというニックネームを解体して新しい呼び名を考えなければならないという懸念も生まれました。

それから10年くらい経ちましたが、私は今でも彼女のことをビッチと呼んでいます。そして彼女もビッチの自覚を持って生きています。やはり一度定着したニックネームを変えるのは難しかったようです。このように「無知」は、時に取り返しのつかない事態に発展することもありますが、あなたの「ふくろはぎ」の話はそこまで深刻だとは思いません。一瞬恥ずかしい思いをするだけで済む話だと思います。

正しい言葉だとか、正しい言葉の意味だとか、全ては人間が勝手に充てがったものです。たとえどんなに品性に欠ける言葉であろうと、私とビッチのようにそれを認識してない者同士の世界では何の意味も持ちません。ビッチという蔑称も途端にキャッチーな愛称に変わります。言葉なんて時代と共に移り変わっていくものなのですから、いっそのこと「ふくらはぎ」も「ふくろはぎ」に変えてしまうくらいの精神でこれからも生きていきましょう。

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